違和感記録室意味がわかると怖い話・毎晩21時更新
記録 No.032分類:張り紙

さがしています

マンションの掲示板に貼られた、迷い猫の張り紙です。猫が見つかったあとも、書きこみが止まりません。

しろちゃんの反応●●●●●読む目安 約2分
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管理人のくろこ

管理人 くろこ

今夜の記録は、マンションの掲示板に貼られていた、迷い猫の張り紙です。……書きこみは、見つかったあとも続いていました。
張り紙

さがしています 迷い猫

なまえ
むぎ
猫
茶トラ・オス・7さい
いなくなった日
8月30日(日)の夜
とくちょう
しっぽの先が、かぎのように曲がっている 左耳に、小さな切れこみ おなかだけ白い よぶと「ニャ」と短く鳴く
連絡先
402号室 杉浦(郵便受けへお手紙でも)

見かけた方は、日にちと場所を、下に書いてください。

9/2 ミモザの裏の自転車置き場。茶トラで、しっぽの先が曲がっていました

9/4 霜見第二団地の裏の空き地。左耳の切れこみ、ありました

9/5 402 杉浦です。空き地、さがしに行きましたが、いませんでした。夜にもう一度行きます

9/8 同じ空き地。人が近づくと、草むらに逃げます。首輪はしていません

9/12 402 杉浦です。見つかりました!けさ、玄関の前にちょこんと座っていました。ご協力ありがとうございました

9/15 空き地に、まだ茶トラがいます。しっぽの先が曲がっています

9/16 402 杉浦です。むぎは家にいます。病院の先生にも、むぎだと言ってもらいました。べつの猫だと思います

9/19 空き地の茶トラに、えさをあげています。人なつこい子です

9/21 402の方を見かけました。夜中の2時すぎ、空き地で。はだしで、茶トラをじっと見ていました

9/22 402 杉浦です。その時間は、家で寝ていました。人ちがいです。わたしのことは書かないでください

9/23 402の方、今夜も空き地に。「杉浦さん」と呼んだら、ふりむいて、にっこりしました

9/24 402 杉浦です。管理会社にも警察にも相談しています。書いている方、名のってください

9/26 空き地の茶トラを保護して、霜見どうぶつ病院でチップを読んでもらいました。マイクロチップの飼い主は、402号室の杉浦さんでした。

確認印
掲示許可
森下

掲示期限 9月30日まで(期限まで、はがさないでください) ミツバ住宅管理

八月三十日の夜、むぎが網戸のすきまから出ていった。次の日、マンションの一階の掲示板に張り紙を出した。管理会社のミツバ住宅管理の森下さんが、すぐに許可の判子を押してくれた。保健所と霜見どうぶつ病院にも、届けを出した。

九月十二日の朝、むぎは玄関の前に座っていた。保健所と病院には、その日のうちに取り下げの電話をした。十四日に病院へ連れていくと、先生はしっぽの先と左耳を見て、「むぎちゃん、おかえり」と笑った。帰ってきてから、むぎは夜、わたしの枕の横で、わたしの顔のほうを向いて眠る。

張り紙は、期限の九月三十日まで、はがせない決まりだという。書きこみは、むぎが帰ってきてからも続き、九月二十一日からは、わたしのことになった。森下さんにも警察にも相談したが、書きこみだけでは何もできないと言われた。

マンションの掲示板に貼られた、迷い猫の張り紙です。猫が見つかったあとも、書きこみが止まりません。

›ヒント1

9月21日から、書きこみは誰のことになりましたか。夜中の空き地にいた「402の方」は、誰だったのでしょう。

›ヒント2

病院の先生は、帰ってきたむぎの、どこを見て「むぎちゃん」と言ったでしょう。張り紙の「とくちょう」と並べてください。

›解説を読む(ネタバレ)

ひとことで言うと

家にいるむぎは、むぎではない。夜は杉浦さんの顔で外にいる。

そう言える理由

  1. 1

    「先生はしっぽの先と左耳を見て」

    → 確かめたのは張り紙に書いた目印だけ。チップは読まれていない。

  2. 2

    「わたしの顔のほうを向いて眠る」

    → 帰ってきたものは、夜ごと杉浦さんの顔を覚えていた。

  3. 3

    「マイクロチップの飼い主は、402号室の杉浦さんでした。」

    → 空き地の猫が本物のむぎで、家にいるのは別のものだ。

記録室の追記

病院からの電話に、402号室の杉浦さんは「うちのむぎは、家にいます」と答えたそうです。

›もっと詳しく

空き地の茶トラのチップは杉浦さんのもので、本物のむぎはずっと空き地にいた。9月12日に玄関の前に座っていたのは、張り紙に書かれたとおりの姿をしたもので、病院の先生も、張り紙にある目印しか見ていなかった。それは夜ごと枕の横で杉浦さんの顔を覚え、杉浦さんが眠っているあいだ、その姿で空き地の本物のむぎを見張っていた。

入口は、見つかったあとも続く書きこみです。むぎは帰ってきて、病院の先生にも「むぎちゃん」と言ってもらった。それなのに誰かが空き地の茶トラのことを書き続け、9月21日からは杉浦さんのことを書きはじめます。夜中の空き地にはだしでいた、名前を呼んだらふりむいた。杉浦さんはその時間は寝ていたと答えています。杉浦さんに似た誰かがいるのか、書いている人がうそをついているのか。そう読めます。

けれど、空き地の茶トラのチップは杉浦さんのものでした。9月12日に帰ってきた「むぎ」を、病院の先生は、しっぽの先と左耳を見ただけで帰しています。どちらも張り紙に書いてあった目印です。夜ごと枕の横で杉浦さんの顔のほうを向いていたそれは、杉浦さんが眠っているあいだ、杉浦さんの姿で、本物のむぎを見に行っていたのです。

管理人のくろこ

管理人 くろこ

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