違和感記録室意味がわかると怖い話・毎晩21時更新
記録 No.029分類:メッセージ

恋人が早起きになった

用水路に落ちて入院した恋人の、前のアカウントに送ったメッセージです。退院してから、彼は毎朝六時に、落ちた用水路のほうへ出かけていきます。

しろちゃんの反応●●●●●読む目安 約2分
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管理人のくろこ

管理人 くろこ

今夜の記録は、退院した恋人の、前のアカウントとのメッセージです。……帰ってきた彼は、少しだけ変わっていました。
湊

9月14日(月)

ちょっと走ってくる
21:02
こんな時間に?用水路のほう暗いから気をつけてね
既読 21:02
21:02
りょ
21:03
遅くない?
既読 6:40
22:48
電話出て
既読 6:40
23:31
警察に電話した。朝まで探してくれるって
既読 6:40
23:58

9月15日(火)

病院から電話きた。用水路で見つかったって。いま行くね
既読 6:40
7:12

9月19日(土)

退院おめでとう
既読 6:40
21:40
スマホ、用水路から見つからなかったね。新しいのにしたから、こっちはもう誰も見てないよね
既読 6:40
21:41
帰ってきたら、自分でごはん作ってた。料理なんてしたことなかったのに。私の作った肉じゃがは、おなかいっぱいって残してた
既読 6:40
21:45

9月21日(月)

今日も六時に起きて、用水路のほうへ出ていった。休みの日は昼まで寝てたのに
既読 6:40
7:30
落ちたところなのに、こわくないのかな
既読 6:40
7:31
落ちたときのことは、なにも覚えてないって。頭を打ったせいだって、お医者さんも言ってた
既読 6:40
7:33

9月24日(木)

夜中に目を開けたら、湊が起きてて、私の顔をじっと見てた
既読 6:40
23:10
「ちな、あの夜どこにいた?」って
既読 6:40
23:11
家にいたよって言った。何回も電話したじゃんって
既読 6:40
23:12

9月26日(土)

湊、新しいスマホをお風呂にまで持っていく。暗証番号も変えてた
既読 6:40
12:20
朝六時に、誰かと会ってるのかな
既読 6:40
12:21

9月28日(月)

今朝、こっそりついていった
既読 6:40
7:05
誰とも会ってなかった。用水路のふちを、下をのぞきながら、ゆっくり歩いてた。なにか探してるみたいだった
既読 6:40
7:06

9月30日(水)

あしたは私も一緒に行くって言った。湊、ことわった
既読 6:40
22:30
前の湊なら、なんでも「りょ」って言ってくれたのに
既読 6:40
22:31

10月1日(木)

スマホ、見つけた
6:40
ちな、なんで押したの
6:41

九月十四日の夜、同棲している湊は、ランニングの途中で用水路に落ちた。見つかったのは翌朝で、霜見中央病院に五日入院した。スマホは、防水のケースごと、水の中から見つからなかった。

九月のはじめ、湊から別れ話をされていた。十月にはこの部屋を出ていく、と。あの夜のことがあってから、その話は一度も出ていない。

退院した湊は、新しいスマホにした。前のアカウントには、もう誰もいない。だから、本人に言えないことは、ここに書いてきた。

用水路に落ちて入院した恋人の、前のアカウントに送ったメッセージです。退院してから、彼は毎朝六時に、落ちた用水路のほうへ出かけていきます。

›ヒント1

帰ってきた湊さんは、毎朝六時に用水路で何をしているのでしょう。夜中に千夏さんに聞いたことも見てください。

›ヒント2

22時48分からの既読が、すべて同じ「6:40」なのはなぜでしょう。九月のはじめに湊さんが話したことも、思い出してください。

›解説を読む(ネタバレ)

ひとことで言うと

あの夜、湊を用水路に押したのは千夏だった。

そう言える理由

  1. 1

    「十月にはこの部屋を出ていく」

    → 別れ話をされていた千夏には、湊を行かせたくない理由があった。

  2. 2

    「こっちはもう誰も見てないよね」

    → 千夏は、スマホが見つからないことに安心していた。

  3. 3

    「ちな、なんで押したの」

    → スマホを見つけた湊は、あの夜のことを覚えていた。

記録室の追記

湊さんは、十月一日のうちに部屋を出ています。

千夏さんは、いまもこのアカウントに書いています。既読は、もうつきません。

›もっと詳しく

九月十四日の夜、湊を用水路に押したのは、別れ話をされていた千夏だった。22時48分からのメッセージは「家にいた」ことにするためのもので、千夏はスマホが見つからないことに安心して、ここに書いていた。湊は覚えていないふりをして毎朝スマホを探し、十月一日の6時40分に見つけて、すべてを読んだ。

入口は、帰ってきた湊さんの変わりようです。料理をするようになり、休みの日も六時に起きて、落ちた用水路のほうへ出かけます。夜中には千夏さんの顔を見つめ、あの夜どこにいたかを聞きます。新しいスマホは手放しません。千夏さんは浮気を疑ってあとをつけ、湊さんが用水路をのぞきこんで何かを探しているのを見ています。

湊さんは、あの夜のことを覚えていました。千夏さんの作ったものを残し、夜中に顔を見張り、覚えていないふりをしながら、落ちた夜のスマホを探していたのです。既読がすべて6:40なのは、十月一日の朝、見つかったスマホで一度に読まれたから。9月15日の朝7時12分の一通にも、その時刻の既読がついています。

管理人のくろこ

管理人 くろこ

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