担当の森下さん
ボヤのあと、管理会社の担当者と交わしたメッセージです。担当者は、私が部屋の中でしかしていないことまで知っています。
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- 心霊なし

この記録は『コピー機に残っていた張り紙』の続報です。先に読むと、より分かります。

管理人 くろこ
10月3日(土)
9月26日の夜、コンビニで見た張り紙の原稿のことを、弟に話した。スマホで撮った写真も見せた。弟は『たちの悪いいたずらだよ。今夜は俺が起きて見てるから、姉ちゃんは寝な』と言った。警察に電話しようか迷って、やめた。
9月27日の午前2時、駐輪場で火が出た。朝、エントランスに貼られた張り紙は、コンビニで見たものと同じ文面だった。手書きの最後の一行だけが、なかった。
警察には、原稿のことを話した。けれどスマホの写真は、いつのまにか消えていた。消した覚えはない。管理人さんが合鍵で入ったのだと思い、9月28日、業者を呼んで鍵を取り替えた。新しい鍵の1本は、弟に渡した。部屋じゅう、弟と一緒にカメラを探した。
10月3日、契約解除の書面が届いた。
ボヤのあと、管理会社の担当者と交わしたメッセージです。担当者は、私が部屋の中でしかしていないことまで知っています。
›ヒント1
森下さんは、どうやって部屋の中のことを知ったのでしょう。鍵を替えたことも、カメラを探したことも、知っています。
›ヒント2
ソファで眠ってしまった夜、写真が消えた朝、そばにいたのは誰でしょう。原稿のことを話したのは、ひとりだけでした。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
管理会社に私のことを伝えていたのは、弟だった。
そう言える理由
- 1
「今夜は俺が起きて見てるから、姉ちゃんは寝な」
→ 警察を呼ばせなかったのも、火が出るまで起きていたのも弟。
- 2
「ソファでお休みのあいだに、左手から順にお切りしました。」
→ 8月29日は土曜。泊まりに来て、そばにいたのは弟だけ。
- 3
「27日の朝4時ごろに消えております。」
→ 火のあと、眠る私のスマホに触れられたのは、同じ部屋の弟。
記録室の追記
10月10日は、土曜日でした。
翌週、霜見第二団地7号棟の回覧板に、新しく入居されたご姉弟のお知らせが挟まっていました。
›もっと詳しく
森下が部屋の中のことを知っていたのは、合鍵でもカメラでもなく、弟が8月から毎週報告していたからだった。眠っている私の爪を切ったのも、写真を消したのも、1時半に吸い殻を置きに裏へ出たのも弟だ。引っ越し先の7号棟のことも、弟にはもう伝わっている。
ふつうに読めば、管理人が合鍵で夜中に入りこみ、カメラやスマホで語り手を見張っているように見えます。語り手もそう考えて、鍵を替え、カメラを探しました。けれど森下は、替えたばかりの鍵のことも、押し入れを探したことも知っています。鍵もカメラもなしにそれを知り、眠っている体に触れ、写真を消せたのは、同じ部屋で夜を過ごしていた人だけです。
弟が泊まりに来るようになったのは、管理人がゴミ袋を開けはじめたのと同じ8月でした。原稿の写真を見て『いたずらだ』と笑い、『俺が起きて見てる』と姉を寝かせ、1時半に裏へ出た。語り手が最後に守ろうとしたのは、ずっと報告していた本人でした。

管理人 くろこ
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