引越し作業報告書
引っ越し業者の作業報告書です。お客さまが持っていないはずの荷物が、ひとつ、新しい部屋へ運ばれています。
- 文書
- 人怖
- 違和感
- 住まい


管理人 くろこ
引越し作業報告書 霜見ひっこし便
- お客さま
- 大槻 さま
- 作業日
- 9月18日(金)荷造り 9月19日(土)搬出・搬入
- 旧居
- コーポ榎 203号室
- 新居
- サンコート霜見 401号室
- 立会い
- 9月18日 ミツバ住宅管理 森下さま(お客さまご勤務のため) 9月19日 お客さま
- お荷物
- 段ボール24/冷蔵庫・洗濯機・ベッド・本棚・机/衣装ケース5
作業メモ(班長記入)
9/18 13:00 森下さま立会いで入室。お客さまのメモどおり、台所から荷造り
押し入れの天袋に衣装ケース1。森下さまより「大槻さんのものなので、中は動かさず、そのまま運んでほしい」とのこと。ふたをテープで留める
天袋のケースは重いため、二人で下ろす。ほかの衣装ケースとまとめてラップで梱包
9/18 17:40 荷造り完了。森下さまが施錠
9/19 9:00 お客さま立会い。搬出開始
9/19 14:10 新居へ搬入。天袋のケースは、旧居と同じく押し入れの天袋へ(森下さまのご指示)
お客さまご確認 段ボール24・家具5点・衣装ケース5 受領サインいただく
9/20 10:30 お客さまよりお電話。「天袋の衣装ケースは自分のものではない。引き取ってほしい」
9/20 15:00 引き取りにうかがいました。ケースは空で、ふたのテープは内側から切られていました。押し入れの天井板が一枚、ずれていました。
霜見ひっこし便 班長 吉川
前の部屋、コーポ榎の203号室には四年住んだ。ここ一年は、夜中に何度も目がさめるようになって、越すことにした。新しい部屋は、前と同じ管理会社の森下さんが探してくれた。
荷造りは、業者にまるごとまかせるプランにした。前の日の金曜はどうしても仕事を休めず、森下さんが鍵をあけて立ち会ってくれた。当日は朝から立ち会ったが、荷物はもう全部ラップで巻かれていて、受け取りのサインも、ろくに数えずにした。
次の朝、押し入れの天袋に、見覚えのない衣装ケースが一つ入っているのに気づいた。なんとなく、あける気になれなかった。
引っ越し業者の作業報告書です。お客さまが持っていないはずの荷物が、ひとつ、新しい部屋へ運ばれています。
›ヒント1
天袋のケースを「中は動かさず、そのまま」と言ったのは誰でしょう。大槻さんは、その日どこにいましたか。
›ヒント2
大槻さんは、ケースをあけずに業者を呼んでいます。業者が来るまでの一晩、ケースの中身はどうしていたのでしょう。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
ケースの中の誰かが、新しい部屋の天井に越してきた。
そう言える理由
- 1
「夜中に何度も目がさめるようになって」
→ 前の部屋の押し入れの上に、誰かが住んでいた。
- 2
「中は動かさず、そのまま運んでほしい」
→ 中の人が見つからないよう、森下さんがケースごと運ばせた。
- 3
「ふたのテープは内側から切られていました」
→ ケースは中からあけられた。中身は自分で出ていった。
記録室の追記
大槻さんは、今も401号室に住んでいます。押し入れの天袋は、あけていないそうです。
このところ、夜中に目がさめることはなくなったといいます。
›もっと詳しく
天袋のケースには、生きた誰かが入っていた。前の部屋で夜中に目がさめたのは、その誰かが押し入れの上にいたから。森下さんの指示で、その誰かはケースごと新しい部屋の天袋へ運ばれ、内側からテープを切って、天井の上へ移った。
入口は、数に入っていた知らない荷物です。重いケースを、管理会社の人が「中は動かさず」と言って運ばせた。中には見られてはいけないものが入っていて、大槻さんの部屋へ押しつけられた。そう読めます。
けれどケースは、業者が来たときには空で、テープは内側から切られていました。前の部屋で夜中に何度も目がさめていた一年、押し入れの上には誰かがいました。その誰かは、森下さんに運ばれて一緒に越し、今は401号室の天井の上にいます。

管理人 くろこ
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