母が漢字を覚えた
実家の母は、ひらがなしか打てません。その母から、ある夜とつぜん漢字のメッセージが届きます。
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管理人 くろこ
9月14日(月)
9月15日(火)
9月16日(水)
9月17日(木)
9月18日(金)
父を見送って三年、母は霜見の古い家で一人で暮らしている。私は仕事を言い訳に、父の葬式から一度も帰っていない。毎朝七時前に届く「げんきです」を確かめるのが、私の日課だ。
母は目が悪く、漢字に変換できない。ひらがなと空白だけで打ち、小さい「ょ」や「っ」も出せずに「きよう」「まつてる」となる。夜は八時には布団に入り、朝は五時前に目を覚ます。
春から、近所のさえきさんという人が毎日様子を見に来てくれている。私は会ったこともなく、母が言うには電話の横に貼ってある番号の末尾が2811、ということしか知らない。これは、連休に帰ると決めた週のやりとりだ。
実家の母は、ひらがなしか打てません。その母から、ある夜とつぜん漢字のメッセージが届きます。
›ヒント1
母は、どうして急に漢字を打てるようになったのでしょう。スマホの電話も、家の電話もつながりません。
›ヒント2
さえきさんが母に聞いていたこと、夜中に探っていた部屋。最後の一通の「ふとん」は、誰が敷いたものでしょう。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
佐伯がなりすましていたのは、母ではなくミカだった。
そう言える理由
- 1
「みかちやんの めつせーじの じかんも」
→ 佐伯は母を通して、ミカの暮らしぶりを調べていた。
- 2
「さえきさん よなかに みかちやんの へやで なにか さがしてた」
→ 探していたのは書類ではなく、ミカになるための服や写真。
- 3
「いま となりの ふとんで ねてるよ」
→ 15日に佐伯が敷いた布団で、今は「ミカ」が寝ている。
記録室の追記
ミカさんは九月十九日の朝、実印を鞄に入れて家を出ています。
その朝も七時ちょうどに「おはようございます。今日も元気です。」が届いていました。
›もっと詳しく
漢字で打っていたのは佐伯で、ミカを実家から遠ざけ、来ると決まると実印と印鑑証明を持ってこさせようとした。けれど佐伯がなりすましていたのは母ではなく、ミカのほうだった。目の悪い母は、17日の夕方から佐伯の布団で隣に寝ている女を、三年ぶりに帰ってきた娘だと思っている。
入口は9月15日23:48の一通です。夜八時に寝る母のスマホから、漢字と句読点の文が届き始め、スマホも家の電話もつながらなくなります。打っているのは佐伯で、ミカを遠ざけようとし、来ると決まると実印と印鑑証明を持ってこさせようとしました。ここまでは、佐伯が母になりすましているように読めます。
けれど佐伯が本当になりすましていたのは、ミカのほうでした。母からミカのメッセージの時刻や好きなもの、子どものころの話を聞き出し、夜中にミカの部屋を探ったのは、娘になるための支度です。父の葬式から三年帰っていない娘の顔を、目の悪い母は見分けられません。17日の夕方に「帰ってきた」ミカは、佐伯が敷いたあの布団で、母の隣に寝ています。本物のミカは、翌日、実印を持ってその家に着きます。
続報あり
この記録には、その後の記録が届いています。
実家に帰った妻 ›

管理人 くろこ
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