一階のおばあさんの手紙
一階に住むおばあさんが、二階の部屋のポストに入れつづけた手紙です。毎週、同じ曜日のことが書いてあります。
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管理人 くろこ
二階のかたへ
8月20日 夜のベランダに、洗濯物をほさないで。
8月27日 水曜の夜は、カーテンをしめてから、あかりを消して。
9月3日 ゆうべ、お風呂の窓があいていました。しめなさい。
9月10日 水曜の夜は、だれも部屋に入れないで。
9月17日 ゆうべも見ていました。あなたが眠ったあと、ベランダで長いこと、下を見ている人がいます。
9月25日 前に二階に住んでいたのは、わたしの娘です。娘のところにも、水曜に、あの人が泊まりにきていました。娘は、ある木曜の朝から帰りません。 上原
四月から、コーポ楓の201号室に住んでいる。部屋は、つきあって一年になる拓海が見つけてくれた。拓海は、ときどき泊まりにくる。
八月から、ポストに一階の上原さんの手紙が入るようになった。上原さんは七十をすぎて、ひとりで暮らしている。会えば頭を下げるだけの人だった。
拓海は、夜中に上原さんが庭に立って、うちの窓を見上げているのを見たと言った。お風呂の窓のことまで書かれて、気味が悪くなった。管理会社の森下さんが上原さんのご家族と話して、施設に移れるようにしてくれた。
一階に住むおばあさんが、二階の部屋のポストに入れつづけた手紙です。毎週、同じ曜日のことが書いてあります。
›ヒント1
手紙に書いてあるのは、いつも水曜の夜のことです。上原さんは、なぜ水曜の夜ばかり見ているのでしょう。
›ヒント2
眠ったあとのベランダに出られるのは、その夜、部屋の中にいた人だけです。夜中の上原さんを見ていたのは、誰でしたか。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
上原さんは、いなくなった前の住人の母親だった。
そう言える理由
- 1
「部屋は、つきあって一年になる拓海が見つけてくれた。」
→ 拓海は、前の娘さんが住んでいた部屋を知っていた。
- 2
「夜中に上原さんが庭に立って、うちの窓を見上げているのを見たと言った」
→ 夜中の窓辺にいて、上原さんに見られていたのは拓海。
- 3
「あなたが眠ったあと、ベランダで長いこと、下を見ている人がいます。」
→ 眠ったあとの部屋にいたのは、泊まりにきた拓海だけ。
記録室の追記
最後の手紙は、上原さんが施設の迎えの車を待つあいだに書いたものだそうです。
今週の水曜も、201号室には拓海さんが泊まりました。一階の部屋には、もう誰もいません。
›もっと詳しく
上原さんは、二階をのぞく変な人ではなく、前に201に住んでいた娘さんの母親だった。娘さんは、水曜に泊まりにくる拓海のあとで、いなくなった。上原さんは一階に住んで、同じ部屋に来た次の人を、毎週水曜に見張っていた。201号室を見つけたのも、上原さんを「気味の悪い人」にしたのも、拓海だった。
入口は、一階のおばあさんの手紙です。洗濯物、カーテン、お風呂の窓。二階の暮らしをのぞいているように読めて、最後の手紙まで、こわいのは上原さんのほうだと思えます。
けれど手紙はどれも、水曜の夜のことでした。夜中に庭の上原さんを見たのは拓海です。つまり拓海も、その時間、窓辺にいた。上原さんは、娘がいなくなった部屋の下に住み、次に来た人を毎週見ていました。警察に何を言っても取りあってもらえなかった人が、ふるえる字で書けたのは、ここまででした。上原さんが施設へ移ることになったのは、拓海の話がきっかけです。

管理人 くろこ
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