日曜日の家族会議
再婚した家で、夫と子どもたちが毎週日曜にひらいている家族会議のノートです。わたしのことが、書いてありました。
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管理人 くろこ
4月12日(日) 出席 お父さん・ひなた・そら 書記 ひなた
議題 お母さんについて
カレーがからい。ほんとうのお母さんのカレーは、りんごが入っていた。お父さんから伝える。
そらのことを「そらくん」とよぶ。「そら」にしてもらう。
5月10日(日)
カレー、りんごが入った。まだ、とろみが足りない(そら)。
髪がまだ短い。ほんとうのお母さんは肩の下まであった。のばしてもらう。
シャンプーは、お父さんが前と同じものに替えておいた。
6月14日(日)
字のくせがちがう。お父さんが家計簿をたのんで、ほんとうのお母さんの家計簿を見ながら書いてもらう。
寝るのは窓のほう。替えてもらった。
8月9日(日)
居間の写真を見て「きれいな人ね」と言った。ほんとうのお母さんは、そんなことを言わない。写真は、お父さんがしまう。
9月13日(日)
ほんとうのお母さんの服を、お母さんのたんすに入れた(お父さん)。
9月27日(日)
まだちがうところ。笑うときに口をかくさない。「ごめんね」が多い。夜中に一度、目をさます(そらが見ていた)。
議題2 10月3日(ほんとうのお母さんの命日)までに直らなかったら、一人目と二人目のお母さんのときと同じように、森下さんに引き取ってもらう。次の人は、もっとほんとうのお母さんに似た人をお願いする。
夫とは、世話人の森下さんの紹介で知り合い、この春に結婚した。四年前に奥さんを亡くして、中学2年のひなたと、小学5年のそらを一人で育ててきた人だった。
日曜の午後、三人は居間で家族会議をひらく。そのあいだ、わたしは決まって買いものをたのまれる。新しい家族に慣れるまでの、三人だけの時間なのだと思っていた。
夫に言われるまま、カレーにりんごを入れ、髪をのばし、シャンプーも替えた。亡くなった奥さんの好みに合わせているのは分かっていたし、それで子どもたちが落ちつくならいいと思っていた。9月27日、帰りが早かった日に、食卓にこのノートが開いたままになっていた。
再婚した家で、夫と子どもたちが毎週日曜にひらいている家族会議のノートです。わたしのことが、書いてありました。
›ヒント1
家族会議で話しあわれているのは、いつも、お母さんがほんとうのお母さんとどこがちがうか、です。
›ヒント2
そろわなかったら、三人はどうするつもりなのでしょう。わたしを紹介した森下さんは、ほかに何をしてくれる人でしょう。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
わたしは、三人目の「お母さん」だった。
そう言える理由
- 1
「ほんとうのお母さんの家計簿を見ながら書いてもらう。」
→ 字のくせまで、亡くなった人にそろえさせていた。
- 2
「夜中に一度、目をさます(そらが見ていた)。」
→ 寝ているあいだも、子どもに見られていた。
- 3
「夫とは、世話人の森下さんの紹介で知り合い、この春に結婚した。」
→ 紹介した人は、引き取る人でもあった。
記録室の追記
ノートは、開いていたページのまま、食卓にもどしておいたそうです。
10月1日の夜、そらくんがはじめて「おかあさん」と呼びました。呼んだあと、ひなたさんのほうを見て、うなずいたそうです。
›もっと詳しく
家族会議は、新しい母親になじむための話しあいではなかった。亡くなった母親とちがうところを一つずつ直させる、点検の会だった。わたしの前にも、一人目と二人目の「お母さん」がいた。そろわなかった二人は、紹介した森下さんに引き取られた。期限は、10月3日。
入口は、亡くなった母親とくらべられる、新しい母親のつらさです。カレーの味、呼び方、髪の長さ。子どもたちに受け入れてもらうために、わたしは合わせてきた。そう読めるし、わたし自身もそう思っていました。
けれど三人は、なじもうとしていたのではなく、そろえていました。字のくせ、寝る側、笑い方、夜中に目をさます回数まで。わたしの前にも、同じように点検され、そろわなかった二人がいました。二人を連れていったのは、わたしを紹介した森下さんでした。

管理人 くろこ
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