七年おくれのはがき
七年前に家を出て、「さがさないで」とはがきをよこした妹。その妹から、もう一枚、はがきが届きました。
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管理人 くろこ
おねえちゃんへ
- 宛名
- 霜見市南町3-8 北川はるか様
- 転送
- 転居届により、下記へ転送します 霜見市桜台2-14 霜見ハイム204
- おわび
- 霜見駅前ビルの取りこわしにともない撤去した郵便ポストの内部から、このはがきが見つかりました。お届けが大変遅れましたことを、深くおわび申し上げます。 霜見郵便局
9月15日
バイトの帰りに、車にのせられた。いまも、どこかの部屋にいる。
窓は板でふさがれていて、すきまから、下の道が少しだけ見える。
ここの人は、ずっとていねいな話し方をする。ごはんもくれる。どなったりしない。
毎日、はがきを書かされる。「さがさないでください。好きな人と暮らします」って、何まいも。いちばんわたしの字らしいのを、えらんで出すんだって。
だから、そのはがきがとどいても、信じないで。わたしの字だけど、わたしが書きたかったことじゃない。
これは、書かされたはがきの一まいに、こっそり書いています。すきまから下の道に落とします。ひろった人、ポストに入れてください。
くつばこの上に、この部屋あての電気の紙があった。霜見ハイム204。おねえちゃん、たすけて。
七年前の9月13日、大学生だった妹のみずきは、アルバイトの帰りに家へ戻らなかった。一週間後、みずきの字で「さがさないでください。好きな人と暮らします」とはがきが届き、警察は家出として扱った。
わたしは、みずきがいつ帰ってきてもいいように、ずっと実家を出なかった。今年の春、両親にすすめられて、やっと一人暮らしを始めた。
9月29日、郵便局のおわびの紙と、転送のシールがついたはがきが届いた。宛名は実家で、字は、みずきのものだった。
七年前に家を出て、「さがさないで」とはがきをよこした妹。その妹から、もう一枚、はがきが届きました。
›ヒント1
七年前に届いた「さがさないで」のはがきも、みずきさんの字でした。なぜ家族も警察も、それを信じたのでしょう。
›ヒント2
郵便局が貼った転送のシールを、もう一度見てください。はるかさんは今、どこに住んでいますか。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
妹が閉じこめられていたのは、姉が今住む部屋だった。
そう言える理由
- 1
「いちばんわたしの字らしいのを、えらんで出すんだって。」
→ 七年前のはがきは本物の字だった。だから誰も疑わなかった。
- 2
「転居届により、下記へ転送します 霜見市桜台2-14 霜見ハイム204」
→ はがきが転送された先は、はるかさんの今の部屋。
- 3
「すきまから、下の道が少しだけ見える。」
→ 妹が見ていた道を、はるかさんは今、毎日歩いている。
記録室の追記
204号室を紹介したのは、管理会社の森下さんでした。
はるかさんが部屋を出たいと伝えると、森下さんは、すぐに次の部屋をさがしてくれたそうです。
›もっと詳しく
七年前の「さがさないで」は、みずきさんが閉じこめられた部屋で、無理に書かされた一枚だった。本物の字だったから、家族も警察も信じた。はがきの最後に書かれた部屋は、転送のシールにある、はるかさんの今の部屋と同じだった。
入口は、七年前のはがきです。家出だと思われていた妹は、さらわれていた。「さがさないで」は、書かされた一枚だった。読んでいる人は、ここで七年前の事件の真相にたどりついたと思います。
けれど、はがきは宛名のとおりには届きませんでした。はるかさんは春に実家を出て、郵便局に転居届を出していたからです。妹が板のすきまから見ていた道は、今、はるかさんが毎朝歩いている道でした。

管理人 くろこ
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