回覧板が来ない週 第6話
安全確認のご報告
訓練のあとに届いた、お礼とご報告の回覧です。「お預かり品」が、いつ見つかったのかを見てください。
- 連作
- ご近所
- 住まい
- 人怖
- 違和感
- 心霊なし
- 流血あり


管理人 くろこ
7号棟3号階段 回覧 第31号
- 発行日
- 6月14日(日)
- 発行
- 班長 高野(501)
- 回覧期限
- 6月20日(土)までに班長へ
【夜間防災訓練のお礼】6月7日(日)の訓練は、ご不在のお宅なく、全戸にご参加いただきました。夜遅くまでありがとうございました。
【転入のご予定】6月20日(土)に、402号室へ新しい方が入られます。
【排水管清掃のお知らせ】7月14日(火)9時から17時まで、業者が各戸の台所・浴室の排水管を清掃します。ご在宅をお願いいたします。
【踊り場に面した窓について】台所の窓に目隠しのシートを貼っているお宅があります。外から中の様子が分かるほうが安全です。シートはお控えください。
【お預かり品】訓練の前に302号室の浴室を確認した際(21時40分〜22時05分)、排水口の奥から、長い髪の束と、奥歯が一本出てきました。根元に血がついていました。班でお預かりしています。
【浴室の確認について】302号室では、坂口さんご本人に鍵を開けていただき、はじめから終わりまでお立ち会いいただきました。
霜見第二団地自治会 7号棟3号階段班 回覧順 101→102→201→301→302→401→501→502→班長 お問い合わせ ミツバ住宅管理(森下)090-xxxx-2811
訓練の日は、会社を早く出た。23時に帰れば、3階へ通してもらえない。それなら、先に帰ればいい。九時過ぎの電車に乗り、十時十五分に団地に着いて三階に上がると、301のドアが開いて、野口さんが「あら、早かったのね」と大きな声で言った。
十時半、懐中電灯を持って踊り場に並んだ。302、と呼ばれて、はい、と答えた。高野さんは私の顔を見て、少し考えてから、名簿に丸をつけた。
部屋に戻ると、浴室の床が濡れていた。朝から回しっぱなしにしていた換気扇が止まっていて、排水口のふたが、裏返しに置いてあった。次の日、踊り場に面した台所の小窓に、目隠しのシートを貼った。
訓練のあとに届いた、お礼とご報告の回覧です。「お預かり品」が、いつ見つかったのかを見てください。
›ヒント1
浴室を確認した時刻と、坂口さんが団地に着いた時刻を比べてください。
›ヒント2
確認のとき、302の鍵は誰が開けたのでしょう。そのとき坂口さんは、どこにいたでしょう。
›解説を読む(ネタバレ)
ひとことで言うと
浴室の確認で鍵を開けた「私」は、まだ電車の中だった。
そう言える理由
- 1
「21時40分〜22時05分」
→ 坂口さんが団地に着いた10時15分より前だ。
- 2
「九時過ぎの電車に乗り」
→ 確認のあいだ、坂口さんはまだ電車の中にいた。
- 3
「坂口さんご本人に鍵を開けていただき」
→ 302の中に、班が「本人」と呼ぶ別の誰かがいた。
記録室の追記
坂口さんはその週から、換気扇を止めて出かけるようにしました。
翌週の水曜日、帰ると回っていたそうです。
›もっと詳しく
班が302の浴室を確認したのは21時40分から22時05分で、坂口さんが団地に着いた10時15分より前だった。ところが回覧は、その確認で「坂口さんご本人」が鍵を開け、最後まで立ち会ったと書いている。坂口さんがまだ電車にいたころ、302の中には坂口さんとして扉を開ける誰かがいて、班はそれを本人として扱っていた。
班が302の浴室を確認したのは21時40分から22時05分。坂口さんは九時過ぎの電車に乗り、団地に着いたのは10時15分です。はじめは、班が留守の部屋へ勝手に入ったように読めます。野口さんの「あら、早かったのね」は、予定より早い帰りに驚いた一言でした。
けれど最後の項目で、回覧はその確認に「坂口さんご本人」が鍵を開け、最後まで立ち会ったと書いています。坂口さんがまだ電車にいたころ、302の中から、坂口さんとして扉を開けた誰かがいた。班はそれを本人として扱い、一緒に排水口を開けています。点呼で高野さんが少し考えたのは、今夜の302がどちらなのかを確かめていたからです。

管理人 くろこ
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